相続登記(不動産の名義変更)を自力でやってみる

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相続が発生した場合の不動産の名義変更(相続登記)

近い将来義務化され、相続登記を行わないと処罰される可能性が出てきます。相続登記の手続きは煩雑で司法書士など専門家に委託するのが一般的ですが、手数料もかかるため自力でできるかどうかやってみました。

様々な状況で必要書類が変わってくる

相続人の人数や関係によって取りそろえるべき書類などは変わってきます。今回は下記のケースの場合について、手順や必要書類についてご説明します。

  • 土地と建物(不動産)の名義が亡くなった父親(被相続人)の名義になっている
  • 相続人は、母親とその子供2名(合計3名)で、母親1人が全部相続(名義変更)する
  • 遺言書は無し

必要書類は意外に少ない

このケースの場合の申請に必要な書類は、下記の通りです

  1. 登記申請書
  2. 相続関係説明図
  3. 遺産分割協議書
  4. 相続人全員の印鑑証明書
  5. 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)
  6. 被相続人の住民票除票
  7. 相続人全員の戸籍謄本
  8. 不動産を相続する相続人の住民票
  9. 固定資産評価証明書

必要書類の入手先とその順番

必要書類は、区市町村役場で発行してもらうものと、自分で作成するものがあります。役所が遠方の場合は郵送でのやりとりで入手可能です。しかしながら郵送のため窓口申請より多少時間はかかります。1週間から10日ほどかかる場合もあります。ですから手続きを行う手順としては、役所からの必要書類取付から始めるのが効率的に良いと思います。

その中でも最難関なのが、亡くなった父親(被相続人)のすべての戸籍謄本です。戸籍が作られるのは、①出生したとき、②婚姻したとき、③本籍を変えたとき、が主なものとなりますが、戸籍法により戸籍の形式が変わりつくりかえられていることもあります。ですから父親(被相続人)の戸籍は1つの役場ではなく複数の役場にそれぞれ複数存在する可能性があるのです。被相続人の戸籍が存在するすべての役場に郵送での申請をしなければならないこととなり、時間がかかるのです。

次に問題になりやすい書類が「被相続人の住民票除票」です。住民票除票の保管期間は5年間とされているため、5年以上前に亡くなった場合は、住民票除票を取り付けることはできません。その代替え書類として、市区町村で発行される「不在住・不在籍証明書」または「廃棄証明書」等

が必要です。代替え書類は管轄する各法務局により異なるようなので、事前に電話確認する方法が確実です。「不在住・不在籍証明書」は、その住所に被相続人が在住していない、在籍していないことを証明する書類で、法務局としては住民票除票に替えて、被相続人が死亡したもの(住民票から除かれた)とみなす判断を行える書類となります。

また、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、不動産を相続する相続人(母親)の住民票(戸籍記載あり、マイナンバー記載なし)は、相続人それぞれの居住地の役所や戸籍のある役所で本人が申請すれば簡単に入手できますので、ハードルは低いものとなります。

被相続人の戸籍謄本の集め方

被相続人のすべての戸籍がどこにあるのか?これは下記の手順により明確になります。

  1. 父親(被相続人)の居住地の役所で「住民票除票」を取り付ける
  2. 「住民票除票」に記載されている戸籍のある役所に「被相続人の名前がある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)が欲しい」と申し出て取り付ける
  3. その戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)に出生からの記載が無ければ、転籍後のものなので、転籍前の戸籍(その戸籍謄本に記載がある)のある役所に「被相続人の名前がある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)が欲しい」申し出て取り付ける
  4. 「出生」の記載がある戸籍謄本にたどり着くまで繰り返す

役所が遠方の場合や出向く時間が無い場合は、郵送で書類を申請することができます。その場合の基本的なやり方は、次の通りです。

  1. 各役所のホームページで戸籍謄本の発行申請書をダウンロード、印刷する。
  2. 委任状が必要な場合は、委任状もダウンロード、印刷する
  3. 返信用封筒と返信用切手(封筒に添付)を用意する
  4. 手数料分の定額小為替(郵便局で購入)を用意する

郵送での申請で確認すべきポイントは、「委任状が必要かどうか?」「同封する定額小為替の金額はいくらか?」(戸籍謄本は何通あるのか?」ということになります。これらの疑問を解消するためには、電話で役所に問い合わせをするのが一番早いと思われます。被相続人の氏名を伝えればその役所に何通保管されているのか調べてくれます。委任状や申請者の身分証明書や戸籍謄本が必要かどうかも教えてくれます。

取り寄せる戸籍謄本(除籍・改製原戸籍)の数で同封する定額小為替の金額が確定できます。また返信用封筒や封筒に貼る切手は、戸籍謄本の1通の枚数が数枚ある場合もありうるので定形外のもので切手も重さが超過した場合を考慮して超過分の切手も同封しておくと良いと思います。超過分が必要ない場合は切手を返送してくれます。また、同封した切手が不足した場合でも返信の封筒は「運賃不足」の連絡はがきが添付されてちゃんと届きます。そのはがきに不足分の切手を貼って近くのポストに投函すればOKです。

固定資産評価証明書の取得方法

「固定資産評価証明書」はその不動産の固定資産税を支払っている役所で取り付けますが、その前提となる被相続人(父親)名義の不動産の調査、確定が必要です。なぜならば「固定資産納付書」に記載されていない不動産が登記されている可能性があるからです。法務局に登記されている被相続人の不動産情報(「登記事項証明書」)の取得を方法は次の手順となります。

  1. 「固定資産納付書」に記載されている不動産の所在と地番、家屋番号を確認する
  2. 法務局のオンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」で「登記事項証明書」の取得を申請する
  3. 郵送で届いた「登記事項証明書」に記載されている不動産の「固定資産評価証明書」を所在地の役所で申請する

「固定資産評価証明書」を取得する目的は、名義変更手続きに課税される「登録免許税」の算出です。登録免許税は不動案の課税価格の0.4%となっています。登記申請書にこの「課税価格」と「登録免許税」の金額を明記する必要があるのです。また、登記申請書には「登録免許税」の金額の収入印紙を添付しなければならないのです。

「登記事項証明書」の取得は法務局窓口(600円)でも行えますが、オンライン申請の方が手数料が安く(500円)、しかも郵送料込みの金額です。注意点は、手数料をオンラインで支払える銀行など、方法が限られていることです。自分の銀行口座が対応しているかどうか事前確認が必要です。

登記事項証明書(土地・建物),地図・図面証明書を取得したい方:法務局

「登記申請書」「相続関係説明図」「遺産分割協議書」の作り方

「登記申請書」「相続関係説明図」「遺産分割協議書」 は作成しなければならない書類ですが、特定のフォーマットがあるわけではなく、必要な内容が記載されていれば一から自分で作ることもできるのですが、法務局が公開している「不動産登記の申請書様式」をダウンロードして活用するのが最も簡単で便利です。

今回のケース(遺産分割協議による不動産の名義変更)の場合は、下記のページの「20)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」からダウンロードします。

不動産登記の申請書様式について:法務局

こちらの「記載例」のファイルに載っている<解説及び注意事項等>を熟読して、それに沿って作成していけば、これら3つの書類が完成します。

法務局に申請書類を提出する

書類がそろえば、あとは法務局に提出するだけです。法務局に直接持ち込むこともできますが、郵送でもOKです。無事名義変更手続きが完了すると、法務局から「登記識別情報通知」「登記完了証」が発行されます。不動産を相続する本人(または代理人)が法務局の出向いて受け取ることもできますが、郵送で受け取ることもできます。郵送で受け取る場合は、申請する際に返信用封筒(不動産を相続する相続人の住所と名前を記載する)と返信用切手を提出する必要があります。返信用封筒は戸籍謄本などの返却書類もあるのでA4サイズが良いと思います。また切手代は、定形外郵便(250g以内と想定した場合、250円)+書留料(435円)+本人限定受取郵便(105円)となります「本人限定受取郵便」になるので注意が必要です。

申請書類に不備があれば、申請書に記載された連絡先に法務局より連絡があります。補正を促されたり追加書類の提出を求められる場合があるので、指示に従い対応することになります。すべてクリアされれば法務局から「登記識別情報通知」「登記完了証」が 発行され手続きは終了となります。

書類に不備が無ければ3週間ほどで完了書類が送られてくる

法務局のその時の状況にもよりますが、申請書類に不備が無ければ、約3週間後に完了書類が本人限定受取郵便が届いている旨の通信事務速達郵便が届きます。その中には配達での受け取りを希望する場合は、配達日時を連絡するよう書き記されています。郵便局が近くであればその書類を持って本人が、身分証明書を持って取りに行けば受け取ることができます。

無事受け取ることができれば、中には次の書類が入っています。

  1. 登記識別情報通知
  2. 登記完了証
  3. 戸籍謄本一式(原本)

最重要なのが「登記識別情報通知」です。この書類には12桁の英数字が記載されていて、この英数字を知っている人物が不動産の登記手続き可能となります。第三者にしれたりすると大変なことになりますので保管には最大限の注意が必要です。送られてきた時にはこの英数字が見えないように上からシールが貼られていて、透かして見ることもできない状態となっています。登記手続きをしない限り、この英数字が必要になることはありませんので、シールははがさず保管しておいた方が無難です。またこの書類は紛失しても再発行することはできません。

「登記完了証」はただの完了した旨を通知した書類なので重要ではありません。申請に使用した戸籍謄本は還付手続きを行わなくても自動的に返却されます。その他の書類の還付が必要であれば、申請時に還付手続きが必要ですが、それらは簡単に入手可能なものや手元にコピーを取っておけば良いものと思われます。遺産分割協議書も原本が手元でも必要でれば、あらかじめ複数枚作成して相続人用+申請用1枚を用意しておけば還付の必要はありません。

まとめ

今回、自力での申請を試みましたが、書類不備などの指摘をされることなく、申請手続きが完了しました。「相続登記は面倒くさいので、司法書士など専門家に委託した方が良い」とする話が多いのですが、実際に行ってみると場合によっては自力でも可能な手続きであることが分かりました。

仕事をしているので、平日の昼間に時間が取れない、ということを理由に自力申請をあきらめてしまう方も多いと思われます。しかしながら、今回の申請で平日の昼間に行ったことと言えば、法務局や役所、関係する人への電話連絡、問い合わせのみです。書類の申請や受取は、ほとんどすべてネットや郵送で自宅に居ながら行えるのです。これらは平日の昼間に限らず行えるものとなります。郵便局は休日や夜間でも開いているところも多くなりました。印鑑証明、戸籍謄本や住民票などはコンビニでもプリントできます。

今後手続きの必要性に迫られる方が多くなる「相続登記」の手続きですが、事前に準備することで専門家などに手数料を払って委託することなく、自力で簡単に完了できることが発見できました。

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